オッド・アイの天使 

 我が家には、誰よりも自由かつ誰よりも気ままにして誰よりも愛される暴君が君臨している。純白の体躯に金の右眼と銀の左目をもち、桃いろの耳や鼻や手のひら、縞模様の尾を惜しげなく晒して、きょうも悠々とあるいてまわる。われわれ人間はこの愛くるしい暴君にかしずいて暮らしているわけである。

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 これが我が家の暴君ことティア姫だ。
 十一月の半ばにやってきたティアは、四月末ごろに生後約七ヶ月となる。正確な誕生日がわからないのは、元が拾われ猫だからである。拾った人の話によると、人間に捨てられたのか母猫に育児放棄されたのか定かでないが、生まれたてで臍の緒もついたままの状態で放置されていたそうだ。それが昨年九月二十六日のことだった。
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 これはティアを保護した人が里親募集掲示板に載せた写真である。生後一ヶ月程度のころのものだと思われるこの写真にわたしはひと目惚れして、保護主に連絡をとった。迷いはなかった。猫と生活するのに必要となる諸費用や、責任を持って一生世話をすること、避妊手術の是非、およそ考えられる問題のすべてが一瞬にして吹き飛んだ。こいつと共に暮らすためなら、どんなことでもわたしがすべて引き受けてやる。そう覚悟を決めるのに、一秒とかからなかったのである。
 ティアと名づけたのはわたし自身で、この名はくるりのJUBILEEという曲に由来している。JUBILEEの歌詞には以下のようなフレーズがある。

歓びとは 誰かが去るかなしみを
胸に抱きながらあふれた
一粒の雫なんだろう


 猫の名前を決めかねていた折、ちょうどこの曲を聴いていて、歓びの涙というものについて考えた。猫が涙を流すことがあるのかどうかわからないけれど、「この家にもらわれて幸せだ」と、いつか涙するほど強くそう感じてもらえるように、たくさんたくさんこの猫を愛していこうとの誓いをこめて、tear=涙の名を与えることにしたのだった。何といっても、右にカッパー・左にブルーの美しすぎる眼が、この小さな天使の突出した魅力であるので、何か眼に関連する名前をつけたいという希望もあり、それも同時に叶うこととなった。

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 四月十三日、午前二時現在、ティアはお気に入りの古いマフラーを抱きしめて眠っている。猫は眠っているあいだ夢をみているのだという説があり、真偽は定かでないけれど、あたたかい幸せな夢をみていてくれたらと思う。このブログにはときどきこうして、写真もまじえながらティアとの暮らしを綴っていくことにする。


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